第三回 「ぴことちこ」「さとあな」
こちらの連載は、2011年11月から2012年7月まで以下のサイト(http://vobo.jp/onaho-rusenki01.html)に掲載されたテキストの第二期になります。第一期を踏まえた上の言説になりますので、上記、第一期をお読みの上読み進めることをお勧めします。
■共感消費のフィールドワーク
アナルは草創期から存在するオナホのテーマである。たとえば、アナルホールを作れと業務命令があったらどうするか?
まんこでなく肛門に突っ込むことをどう魅力的に表現するか。
キツさ、非日常感、避妊のためというドラマ性……ゼロ年代中盤までは、それらオナホの特長をパッケージに書き連ねるくらいしかしてこなかった。
競争が激化した2013年現在、オナホの新作が店で目立てるのは発売から2ヶ月程度。すぐ埋もれてしまうものだ。投資額も生産規模も小さくなりがちになる。
その厳しい環境で、箱から出したあとも製品本体の魅力を維持し、ユーザーに良好な使用感を提供し、リピートしたり他者に勧めるような共感のサイクルを形成させる——これができてやっと一人前。アナルに限らず、オナホには共感してもらえるような魅力がなければダメだ。
魅力はわかりやすくあるべき。決して多数派におもねるのではなく、内なる欲望を言い当ててしまうコンセプトが望ましい。
2007年末の「ぼくはぴこ/ちこ」(トイズハート)はちんちんの付いたアナルホールである。世界初のショタエロアニメ「ぼくのぴこ」とのコラボで話題性を確保、少年アナルを訴求した。一般名詞のショタでは弱かったイメージを「ぴこ」の力で持ち上げたわけだ。

SODグループメーカーNATURALHIGH製作、「シリーズぴこ」のキャラクター、ぴことちこのケツメドだ。第一作の「ぼくのちこ」は世界初のショタアニメとしてその筋の金字塔。
同時期のトイズハートはアナル開発課という部署があるほどアナルに力を入れていた。2004年、OEMで極細穴構造を売りにした「おしりカンタービレ!」(エムズ)が元ネタの音楽マンガと全く脈略がないのにヒット。2007年は括約筋パーツを売りにした「課長補佐・綾乃」もリリースされている。
オタク業界は、性別のゆらぎを萌え属性として自覚、商業ベースで追求するようになってきた。性転換作品、女装、ボクっ娘など高度な文化土壌により、性別は性欲のスパイス、ギャップ萌えの一要素に過ぎないとの合意がなされると、男女共通にある肛門はカジュアルに扱われるようになる。アナルホールも受け入れやすくなっていくわけだ。
2011年10月、中野の小さなアダルトショップ「ホットパワーズ」も、ショップオリジナルの新作としてアナルホールをリリースすることになった。
佐藤店員。この日本で一番ありふれた名の男は、販売業務の傍ら、自分の肛門に指を入れて内部の感触を確認、うんこのような内部原型を作り上げた。
肛門内部の構造を写し取ったのだから、うんこなのは当然である。正統派のアナルホールだ。
まともな頭脳の企業なら、ここで女の子のキャラクターをつけて「○○ちゃんのアナル」として販売するもの。
ホットパワーズが狂っているのは、正直に、有名人でもないただのショップ店員、しかも男のアナルを再現したホールだと銘打ってしまったことである。
「スーパー最高級な佐藤のアナル狂い咲きポテンシャル」
略称、さとあな。
そう名付けられたアナルホールは、まさに誰も得しない新商品になった
(http://www.hotpowers.jp/goods/1-1035.html)
■オタク文化がオナホを育てる
コンセプトから製品へ、製品からパッケージへ、プロセスが引き継がれるときには「当てはめ」の作業が行われる。
これは端的に言うと「大喜利」である。大喜利で想定内のうまいことを言って喜ぶのは若者より高齢者、長いものに巻かれろ的なヌルい層だ。若さと性欲にあふれたオナホユーザーには、想定外の異常な回答をぶつけるべき。
何の変哲もないアナルホールに無名の新作女の子キャラを付けていたら、2ヶ月で埋もれてしまっていただろう。「普通」であることのリスクは、実はかなりでかい。
ネット上では「さとあな」に対し、誰得やマジキチと大きな反応があった。当人の佐藤店員にも熱い視線が注がれた。オナホの話なのに腐女子に発見され、ホモ設定を付けられる。総受けと言われる。「ホモじゃないです!」の決めゼリフが生まれる。同人誌まで作られる。
ショップオリジナルで他に売っていないこともあり、さとあなは1年半経った今でもネタにされる強いコンテンツだ。
さとあな同人誌、正式名称は「さとあな〜佐藤さんがなんかアレノハ*´υ`*从カシュッ〜」
佐藤店員はオナホキャラ、いじられキャラとして存在感を高め、物好きのオナホユーザーに後続の新商品を紹介する際、親密さと説得力が増した。
本来、オナホの作り手が前面に出過ぎると、ユーザーがそのオナホを使うときに作り手の顔を思い出して萎えるもの。専門用語で「よぎる」というのだが、すでにこの問題はメタ化されている。作り手をもキャラクター化してしまうことで生々しさを解消しているのだ。
ユーザーはいったんファンタジー世界であるオナホワールドに飛び込んだあと、キャラクター化された各社オナホ広報と遊びつつ、各メーカーが設定した個別商品の世界観に誘導される。観光地が行っているゆるキャラの町おこしに近い図式である。
ちなみに器具田研究所もこのメタ化に対応し、おじさんなのにツインテールというキャラクター「きぐにゃん」を立ち上げている。
器具田教授はリアルでもおじさんなのにツインテールだ。一番最近の打ち合わせではポニーテールにまで手を出していたぞ。
オナホ界のいじられキャラといえば、佐藤店員と同じホットパワーズのマスコット「みくら」、オナ戦第一部の最終回に紹介したラブクラウドの「トメコ」、アダルトショップ大手ワイルドワンの擬人化犬キャラ「ワイルドワン子」などが挙げられる。しっかり者キャラとしてはトイズハートの「イズハ」、秋葉原ラブメルシーの泡女神「あっふぃー」など。
こうしたキャラクターと遊ぶため、Twitterは欠かせないインフラとなっている。ユーザーからは日々、キャラクターに提案が寄せられる。共感を得られる抜きイメージが蓄積され、いつかオナホになって市場に現れるのだ。

- 器具田こする教授
- ラブドールとオナホールのR&Dアートユニット「器具田研究所」を運営。メーカーへのアドバイスや技術協力といった説明のしにくい業務でオナニー業界の異常進化を支えている。http://www.kiguda.net/
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