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第八話

 

 

有田は、

「何か飲まれますか。ボク、奢りますよ」

と、ゆきに言うと、自分は、ジントニックを注文した。

カウンターの中で接客しているのも、女装子だ。

ゆきは、有田とは目を合わせないようにしながら、

「すいません、わたし、コーラお願いします」

と、言った。

それは、柏木がゆきに変身して発した声の中で、いままでのどの声よりも裏返っていた。

その時、「ミスト」の男の店員が、5階へと入ってきた。

中年の、頭頂部の髪が薄いその男こそが、柏木に女装することを薦めた張本人だった。

3ヶ月前のあの日、柏木は、「純男」として、「ミスト」に初めて来た。

カウンターの向かいの壁に掛かっている、ウィッグや女装用のコスチュームを興味深そうに見入っていた時、

「よかったら、メイクルームも見てみる?」

と、柏木に声を掛けてきたのが、その男だった。

その男は、まず、柏木を、仮眠室に案内した。

6畳ほどの広さの、カーペット敷きのその空間には、20代後半の女装子の、切ない喘ぎ声が響いていた。

女装子の下腹部には、ワイシャツにネクタイを締めた40歳くらいのサラリーマンが顔を埋め、白くて細身のペニスに吸い付いていた。

女装子は、詰め物で膨らみを作ったブラジャーのカップの内側に両手を入れ、自分で自分の両乳首を摘んでいた。

柏木が、前日に、「黄金会館」で見たどの女装子よりも、女らしく見えた。

それから、男は、柏木を、カウンターの裏にある、メイクルームへと連れて行った。

「ここは、純男は入っちゃいけないのよ、本当は」

男は、そう言うと、柏木を抱き締め、唇にキスをした。

柏木は、そのまま、下半身のイチモツを握られるかも知れないと思ったが、男は、それ以上は何もしてこなかった。

その代わりに、男は、

「あなた可愛い顔してるから、女の子になってみたらどう?ウィッグも、服もレンタルできるし、化粧も教えてあげるわよ」

と、言ったのだった。

カウンターに座っているゆきに気付いた男は、

「ゆきちゃん、今日もキレイね。イケメンに口説かれてるのね。軽い女の子になっちゃダメよ。私もまだゆきちゃんのこと頂いてないんだから」

と、言った。

その言葉で、有田が、他の女装子の方へ行ってくれることをゆきは期待した。

女装子は、ゆきの他にも、ラウンジのソファーに1人、そして、壁際の長いテーブルのところに2人の、計3人がいた。

有田は、手を伸ばすと、それをゆきの太ももの上に置いた。

そして、

「ボクは、ゆきさんに会いたくて来たんですよ。実物は、写メで見るより何倍も可愛いですね」

と、口説いてきた。

もしも有田に正体がバレたら、また、平松に告げ口されるだろう。さすがに、女装のことが平松に知れたら、もう会社を辞めるしかない。

ゆきは、どうして、そんな危険を冒してまで、女装子になって、こんな発展場に出入りしているのだろうと、今さらながら思った。

ゆきは、有田に太ももを撫でられながら、コーラの入ったグラスに付着した水滴を指で落としていった。

 

 

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天井に付着した水滴が、自らの重たさに耐え切れなくなって、頭の上にポチャンと落ちてくる情景が、ゆきの脳裏に蘇っていった。

あの時、瞑想サウナで、タオルでいつものようにイチモツを隠していたなら、女装子になることもなかっただろう。

ゆきは、そう思ったが、モテたことが一度もなかったあの時より、モテモテの今の方が遥かに人生を楽しめていることを実感していた。

たとえ、その相手が男であったとしても。

やがて、有田の指先が、スカートの中へと入り、ゆきのあの部分に到達した。

薄いパンティのレース越しに、有田は右手の中指と薬指を使って、ゆきのイチモツを優しくさすった。

有田が、300人以上の女と、セックスの経験があることは、平松から聞いていた。

有田自身、「オレはホモじゃないよ。むしろ男は気持ち悪い」と言っていたのを、柏木は、撮影の時に何度か聞いたことがあった。

そんな有田が、浅草のホモサウナに行ったり、高田馬場のニューハーフヘルスに行ったりするのは、「女とヤルよりもドキドキするから」だという。

だとすれば、今、自分のイチモツを触っている有田も、内心は、ドキドキしているのだろうか。いつも、「バカ、バカ」と、人のことを頭ごなしに批判するあの有田が、自分のペニスに触れてドキドキしているのなら、そんな愉快なことはない。

ゆきは、今、この時は、自分と有田の形勢が逆転しているのだと思った。

「ここじゃダメ。あっちに行きましょ」

ゆきは、裏返った声でそう言うと、視線を、廊下の突き当たりにある仮眠室へと向けた。

有田とゆきが席を立つ様子を、ラウンジにいる3人の純男はじっと見ていた。

その3人は、さっきからドリンクを飲みながら、スマホをいじっているだけで、女装子に話し掛けることはなかった。

「あいつらバカですね。女の子の方から、声を掛けてもらえるとでも思ってるんですかね。世の中そんなに甘くありませんよ」

有田は、ゆきの耳元で、小さな声で言った。

「バカ」という単語を聞いて、ゆきは、その男が、カメラマンの有田であることを再認識した。

自分の正体が、もしも、バレたら、その時は、死のう。死ぬ前に、平松を刺してから、富士の樹海に逃げ、そこで、首を吊って死のう。

ゆきは、そう考えながら廊下を歩いた。

膝がガクガクと震えていた。

それでも、あっという間に仮眠室のドアの前に着いた。

志井愛英
小説家。昭和41年生まれ。同性愛者、風俗嬢、少数民族、異端芸術家など、マイノリティを題材にした作品が多い。一部の機関誌のみでしか連載しておらず、広く一般に向けた作品は本篇が初。

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