第十六話
ナースは、ゆきのモノの根元付近を、人差し指と中指の2本で握ると、先端をパクリと口に含んだ。
緊張から、硬くなり切れていなかったゆきのモノは、舌先に転がされるように、ナースの口の中でゆらゆらと動いた。
ノボテルとペプシも2人の側に来て、自分のモノを握り締めながら、純女と女装子のレズに見入っていたが、「先生」に目配せされると、ノボテルはゆきの、ペプシはナースの背後から、手を伸ばしてそれぞれの乳首をまさぐっていった。
ナースが、ゆきのモノから口を離した時、それは、活きのいい魚のよう に、反り返ってピチッと跳ねた。
すかさずノボテルがそれに手を添え、
「苺香さん、この上に座ってみて」
と、言う。
苺香が立ち上がると、ペプシが苺香の股間に潜って、その部分を舐めながら、ローション代わりの唾を付けた。
ノボテルとペプシの連携プレイは絶妙だった。単独男性の手本と言ってもいいだろう。
ノボテルは、1年前に、「先生」が関西のある街で乱交パーティーを開いた時に、単独男性として参加して「先生」と知り合った。ノボテルという名前は、そのパーティー会場となったホテルから取って、「先生」がつけた。
一方のペプシは、以前、乱交パーティーで女のアノ部分に注がれたペプシコーラを吸い付くように全部飲み干したことから、「先生」がつけた名前だった。
ノボテルに秘所を潤わされたナースは、ソファーに腰掛けるゆきの太股を跨ぐようにして膝立ちになった。
その真下には、ノボテルが手を添えたゆきのイチモツが、ビクンビクンと脈打っている。
ゆきは、目を閉じた。
そう言えば、平松の兄は、あれからどこに行ったのだろう。
平松の兄の顔を思い浮かべようとしたゆきの頭の中に現れたのは、かつて瞑想サウナで見た、平松似の男だった。
あの時、あの熱い水蒸気越しに、あの男と目を合わせなかったら、こんな所には絶対来ていないだろう。
もちろん、男に咥えられることもなければ、男のモノを咥えることもな く、そんな世界とは無縁の生活をしているに違いなかった。
そして、恐らくは、女とセックスするチャンスなど、永遠になかった。
たぶん、そうだ。
普通に暮らしていたのでは、女とセックスなど、できないのが当たり前だからだ。
世の中には、一生、女とセックスしない男も2割はいるのではないだろうか。
自分もその中の1人だった。女装子になれば、男にモテることを知った が、女とセックスできるわけではない。
少なくとも、ついさっきまでは、そう思っていた。
ゆきは、瞼に力を入れて、更にギュッと目を閉じた。
イチモツが生温かい軟体動物に巻きつかれたような感触を覚えたからだ。
内臓いっぱいに温めた塩辛が詰め込まれた鯉に喰い付かれたようだとも、ゆきは思った。
男に咥えられた時のように、歯が当たって痛いことはない。
ゆきを包み込んでいた軟体動物は、それ自体が収縮し、キュッとゆきを締め付けていった。
ゆきのモノには、コンドームなど着いていない。
ゆきは思わず、「あ、もうダメ」と、言った。
このままでは、ナースを妊娠させてしまいかねないと思ったからだ。
もう一回、ナースにキュッと締め付けられたら、その瞬間に果ててしまうだろうと、ゆきは思った。
そうなる前に、抜くしかない。
いや、抜く前に、自分の目でしっかり見ておこう。
自分のペニスが、女の性器に挿入しているところを。
ゆきはそっと目を開けた。
自分の硬直が、しっかりとナースの股間に埋まっている。
そして、根元近くに、肉の花びらが左右からピッタリと張り付いていた。
27年間経験することなく生きてきた柏木が、女装子になって1年足らずで、遂に女とセックスした、記念すべき日となった。
だが、そんな感慨に耽っている余裕などなかった。
早く抜かなければ。
ゆきが腰を引こうとしたその時、ナースのその部分は、逃がすまいとでもするかのように、キュッと収縮した。
「ああ!」
ゆきの口から出たのは、柏木の呻き声だった。
余りもの快感に、ゆきの下半身は震えていた。震えてもなお、イチモツはナースに咥えられたままだった。
ナースはそのまま、搾り出さんとばかりにその部分をキュッキュと数回締め付けていった。
「ゆきさん、中に出しちゃったみたい」
ノボテルが言った。
ゆきは、もうどうなってもいいと思った。
「平松を殺したら、自分も死のう。だから、どんなことをしても大丈夫」
ゆきは、今までの人生で一番幸せであろうはずの瞬間に、人生の終わりを覚悟した。
ナースは、「先生」に見せつけるように、そんなゆきの唇に吸い付いていった。
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- 志井愛英
- 小説家。昭和41年生まれ。同性愛者、風俗嬢、少数民族、異端芸術家など、マイノリティを題材にした作品が多い。一部の機関誌のみでしか連載しておらず、広く一般に向けた作品は本篇が初。
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- 第二十八回 「アメリカのアイスホッケーは肉弾戦だが試合途中の氷上整備は超ミニで息抜き」
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