第二十七話

 

 

 間もなく東の空が白んでこようかとしていた時、平松の兄のスマホが鳴った。

「コーちゃん、あなた今東京にいるんでしょ」

 聞こえてきたのは「先生」の声だった。

「今、京王プラザで有志が集まってオシッコ祭りやってるから、タクシー飛ばして来てみませんか。お腹いっぱいオシッコ飲ませてあげますよ。オッフォッフォッフォ……」

 20分後、京王プラザ南館3411号室のドアがノックされた。

 ソファーに座っているゆきのイチモツを口に含んで遊んでいた「先生」が苺香に「コーちゃんだから、中に入ってもらいなさい」と言った。

 入ってきた平松の兄は、「先生」に吸われているゆきと目が合うと、「あ、どうも」と軽く頭を下げた。

 どうして平松の兄が東京にいるのだろう。そして、どうして「先生」は、そのことを知っているのだろう。

 ゆきは、自分のモノを頬張っているこの初老の男が、実は全てを見通しているのではないかと急に怖くなった。

「兄弟揃って変態」

 確かに「先生」は、さっきそう言った。だとしたら、「先生」は編集長の平松とも面識があることになる。あの堅物の平松が一体どんな変態とでもいうのだろう。

「コーちゃん、そこに寝てごらんなさい。まず服を全て脱いで」

「先生」にそう言われた平松の兄は、一切躊躇することなく下着まで全て脱ぎ捨てると、カーペット敷きの床に仰向けになった。

「じゃあ、ナースと変態ちゃんは、コーちゃんの頭の上に跨って。そうそう、向かい合って。ゆきさんは、コーちゃんのモノ、おしゃぶりしてあげてください」

 これから何が始まるのかは、ゆきには容易に想像できた。

 前がはだけたナース服から露出している苺香の乳房と、同じく前がはだけた水玉のブラウスから露出した京華の乳房が、平松の兄の顔の上1メートルくらいのところで接触した。

 「先生」は立ち上がると、苺香と京華の顔の間に、自分のイチモツを差し出した。

 

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 京華がその先端を口に含むと、苺香は茎の部分を舌に絡めた。

「コーちゃん、幸せでしょ。これからお口の中に美女2人が聖水を放ってくれるんですよ。コーちゃんも、ゆきさんの口の中に漏らしちゃって。私も漏らすから。さあ、本日のメインイベント、オシッコ祭りの始まり始まり」

 「先生」は得意気だった。

「まぁ、こんなもん、変態遊びとしては可愛いもんですよ。犯罪でも何でもないんですから、じゃあ、いきますよ。サン、ニー、イチ、ハイ!」

 「先生」の合図から2秒ほど間が空いて、まず最初に飛沫を放ったのはキャバ嬢だった。

「あ、あ、あ、あん…」

 京華は嗚咽を漏らしながら割れ目の奥からチョロチョロと液体を漏らしていたが、出始めから3秒ほど経ったところで、それは勢いを増し、口を開けて待つ平松の兄の顔面に水鉄砲のように噴射していった。

 それを待っていたように、「先生」が京華の口の中に放尿していく。

 それからやや遅れて、ナースの股間から二筋に分かれた水柱が、平松の口と額に降り注いでいった。

 京華の口からこぼれた液体も、首筋から乳房を伝って、平松の顔の上にポタポタと落ちていく。

 平松のイチモツは、ゆきの口の中で膨張していたが、やがて、その先端から、あたかも漏れてしまったかのように液体が溢れ出していった。

 それは、尿の排泄というより、むしろ夢精に似た快感を平松に与えていた。

 ゆきは、男の精を口で受けたり、それを飲んだりすることには慣れていたが、アンモニア臭のする液体の方は口の中に出されることを我慢するのがやっとだった。

 それが京華やナースのものだったら、もしかすると飲んで興奮していたかも知れない。しかし、女装しているとはいえ、本来、ゲイでもスカトロ好きでもないゆきは、「おえっ」とむせ返って、カーペットの上に吐き出してしまった。

「フォッ、フォッ、フォッ。ゆきさんは男のモノを飲むのはさすがに苦手かね。じゃあ飲まなくてもいいから、これも口で受けてみてくれないか」

 「先生」はそう言うと、ゆきの前に膝立ちになり自分のイチモツを咥えさせた。

 ピュッ、ピュッと、2、3回、残っていたオシッコをゆきの中に噴出していく。

 ほんの少量で、匂いも味も薄かった。

 これなら飲めるかも知れない。そう思ったゆきは、口の中に溜まった液体をゴクリと飲み干した。

 目の前には髪の毛までビッショリと濡らしたコーちゃんが、イチモツを天井に向けて起立させたまま小刻みに震えていた。

「ゆきさん、飲んでくれたかね。嬉しいよ。みんなそうやって、少しずつ変態になっていくんだ」

 「先生」は満足そうに言った。

 カーテンの隙間から、朝の光が一筋差し込んでいた。

「もう6時か」

 「先生」はそう言うと、コーヒーテーブルの上にあったリモコンでテレビをつけた。

 浅草でタクシーに撥ねられたフリーカメラマンが死亡したというローカルニュースが流れていた。

 

志井愛英
小説家。昭和41年生まれ。同性愛者、風俗嬢、少数民族、異端芸術家など、マイノリティを題材にした作品が多い。一部の機関誌のみでしか連載しておらず、広く一般に向けた作品は本篇が初。

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