第二十五話

 

 

 「先生」に奥を突かれたキャバ嬢は「ああん」と切ない声を出して快感に顔を歪めた。

 苺香の体内に埋まっていたゆきのイチモツは、それを見て嫉妬し、一層硬さを増していった。

 「先生」は、自分が挿入しているキャバ嬢の尻をぺチンと叩くと、四つん這いのまま前に少し歩かせた。

 後ろから頭を抑えつけ、隣でゆきと交わっているナースの顔にくっつけていく。

 山本美月似のナースと、柏木由紀似のキャバ嬢がねっとりと舌を絡め唇を吸い合う。

 2人が唇を離すと、その間に透明な粘液がツーと糸を引いた。

 「先生」は、キャバ嬢にゆっくりと出し入れしながら、ゆきを抱き寄せ唇に吸い付いていく。それで「先生」のモノがより硬くなったのか、キャバ嬢が「あああ~ん」と声を上げた。

 「ゆきさん、もう出そうならナースの中に出しちゃってください」

 唇を離した「先生」はゆきに言った。

 「いいんですか、わたしイッちゃう」

 ゆきはわざと声を出し、自分が射精しそうであることを告げた。

 それは、京華に、射精するところを見て欲しいという気持ちの表れだった。

 それを察した「先生」は、ゆきの右手を取ると、京華の胸へと持っていった。

 ブラウス越しだったが、その下にブラジャーは無く、柔らかな弾力感がゆきの掌に伝わった。

 「あ、もうイッちゃう」

 ゆきはそう言うと、右手でキャバ嬢の乳房をギュッと掴みながら、苺香の奥にドクッドクッと放っていった。

 果ててしまったゆきがナースとの結合を解くと、割れ目の中から白い粘液がトロッと溢れ出してきた。

 「ああ、美味しそう。飲みたい」

 そう言ったのは「先生」だった。

 「先生」は四つん這いのキャバ嬢から抜くと、ナースの股間に顔を埋め、ジュルジュルと、まるでとろろを啜るようにそれを吸い取っていった。

 そして、クチュクチュと口の中でそれを舌に絡めて味わうと、四つん這いになったままのキャバ嬢に口移しで与えていき、わずかに口に残ったものをゴクリと飲み干した。

 「変態ちゃん、どう、美味いでしょ、女装子ちゃんのカルピス。まだペニクリちゃんの中に少し残っているはずだから、吸わせてもらいなさい」

 「先生」に言われた京華は、口の中に溜まっている生臭い液体を一気に飲み干すと、ゆきの前にぶら下がっているものに吸い付いていった。

 「ゆきさん、もし出そうならでいいんだけど、そのままオシッコ飲ませてあげて。その変態ちゃんカルピスの後にオシッコも飲むと、それだけでイッてしまうんですよ。フォッフォッフォッ」

 「先生」の言葉を聞いたゆきの脳裏に浮かんだのは、館林で会った平松金型工業の社長の顔だった。

 あの時、「マル秘基地」でその男に小便を飲ませていなければ、ゆきは、まだ女相手にセックスすらしないでいた可能性が高い。

 2年前、その男に初めて生臭い液体を飲ませたのは、偶然にもカメラマンの有田だった。

 それからも2回、平松の兄は、有田と会っている。

 池袋の「ミスト」で1回、まだ六本木にあった頃の「グラジオラス」で1回だ。

 その2回は、2人共、純男として、女装子と遊ぶことを目的にそれらの店に行っていたため肉体的に交じり合うことはなかった。

 それでも「神田の宝舟ではどうも」と、短い挨拶は交わした。平松の兄には、有田に関して、その程度の記憶しかない。

 一方の有田は違った。「グラジオラス」のロッカールームで平松の兄が着替えている時、スーツの裏に

 

 Y.Hiramatsu

 

 と刺繍があるのを見逃さなかった。

 有田はピンときた。

 平松の兄が「グラジオラス」の薄暗く湿った空気が充満する部屋のソファーに座って、女装子に小便を飲ませてもらっている様子を有田はカーテン越しのテレビのある部屋から窺っていた。

 有田の目の前には横幅1.5メートルの鏡が壁に立て掛けてあった。

 鏡の高さは1メートルくらい。

 その鏡の表面は、幾筋もの白く濁った汚れで覆われていた。

 それは、「グラジオラス」がゲイ専門の日に、男たちが自分の姿を鏡に映しながら自らの手で放った粘液の跡だった。

 白い筋状の汚れの上からも別の男の粘液が掛けられ、表面全体がすりガラスのようになってしまっていたその鏡は、イチモツを露出させた有田の姿をぼんやりと映していた。

 

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志井愛英
小説家。昭和41年生まれ。同性愛者、風俗嬢、少数民族、異端芸術家など、マイノリティを題材にした作品が多い。一部の機関誌のみでしか連載しておらず、広く一般に向けた作品は本篇が初。

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