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第二話

柏木は、意外にも冷静な自分がそこにいることに気付いた。

男の手は、ゴツゴツしている。新宿のヘルス嬢に握ってもらったのは、もう3年も前のことだが、女に握られるのとは明らかに違うその感覚に、柏木は新鮮さすら感じた。

「凄いよ」

男は、そう何度も言いながら、柏木のイチモツに指を絡め、その感触を楽しむように握っていく。

逃げるなら、今しかない。

柏木は、そう思ったが、不思議と腰を上げようとはしなかった。

それは、男のことが、それほど怖くはなかったからだ。

以前読んだ幾つかの小説の中にも、ホモ男が登場するシーンはあったがそこに書かれていたのは、屈強な男が、乱暴に他の男の肛門を犯していく様子だった。

だが、目の前にいる男は、よく見ると、オドオドしている。身体は筋肉質ではあるが、声は震え、「キミも同志だろう、オレのこと受け入れてくれよ」と、すがるような目付きで自分のことを見ているように柏木には映った。

男に握られていること自体は、確かに気持ち悪かったが、自分にすがってくる人間を柏木は邪険には扱えなかった。

男が強く握ってくるので、多少は痛い。だが、そんなに触りたいなら、触らせてあげてもいい。

柏木は、男が触り易いように、腰を少し突き出してやった。

この時、生まれて初めて、自分のペニスが人の役にたつことを知った。

その時、入口の木の扉の外から、人の話す声がした。

握っていた男は、慌てて、自分が元いた椅子の上へと戻り、タオルを拡げて勃起を隠した。

驚いた柏木は立ち上がり、タオルで前を隠して、瞑想サウナに入ってきた2人組の男と入れ違うようにして外に出た。

外の空気を吸って我に返った柏木は、あの男が追い掛けてくるかも知れないと思うと怖くなり、急いでシャワーを浴びると、髪もよく乾さないうちに、スーパー銭湯から逃げ出した。

自宅に着くと、同居している親に顔を合わせるのが気まずい気がして、「ただいま」とも言うことなく家に上がると、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、二階の自室へと、隠れるように入っていった。

小学生の時から使っている机の上にあったノートパソコンに電源を入れると、起動するまでの間に、プシッと、缶ビールのプルタブを開け、よく冷えた液体を一気に喉へと流し込む。

柏木は、缶ビールの水滴が付いたままの指でマウスを握ると。グーグルのページを開き『瞑想サウナ ホモ 小金井市』と入力して、エンターキーを押した。

小金井市は、柏木の住んでいる街だ。

パソコン画面に、ゲイの発展場を紹介するサイトが、ずらりと並んだ。

そのうちの一つを見ていると、そこに、柏木が通っているスーパー銭湯も、発展場の一つとして紹介されていた。

「知らなかった…」

柏木は、そう心の中で呟くと、二口目のビールを流し込む。

「知らなかった」と思ったのは、近所のスーパー銭湯が発展場だったことだけではない。そのサイトには、数十軒もの温浴施設が、発展場として紹介されていたのだ。

その中には、近所にある、もう一軒のスーパー銭湯や、都心にある有名なスパや、会社近くにあるサウナの名前もあった。

なんのことはない、日本中にある温浴施設の大部分が、ゲイの発展場として利用されているという事実に、柏木は、その時初めて気付かされたのだった。

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そして、サイトを念入りに見ていくと、カメラマンの有田が言っていた浅草のサウナもあった。

その浅草のサウナを含めた2軒、新宿の2軒、駒込の1軒、鴬谷の1軒、上野の2軒などは、どうやら、ゲイ専門のサウナであるらしいことも知った。

女との経験もまだない柏木は、ゲイも含めたセックスの世界が、永遠に底に辿りつけないブラックホールのように思えた。

そして、今、そのブラックホールに、自分自身が吸い込まれようとしているのを感じていた。

三口目のビールは、唇の横からこぼれ、柏木の首筋を濡らした。その、ミミズが這うような気持ち悪さに柏木は、今日、サウナで男に握られた時の生々しい感触を思い出してしまった。

柏木は、ズボンを下ろすと、自分のモノをギュッと握り締めた。

「あの時、他の客が入って来なかったら…」

柏木は、男のゴツゴツした手で、扱かれ続けることを想像しながら、自分の手の中で果てた。

ビールによる酔いも手伝ってか、胸の辺りからのぼってくる吐き気と共に、背筋に、ゾクッと悪寒が走ったのを感じた。

志井愛英
小説家。昭和41年生まれ。同性愛者、風俗嬢、少数民族、異端芸術家など、マイノリティを題材にした作品が多い。一部の機関誌のみでしか連載しておらず、広く一般に向けた作品は本篇が初。

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