第五回 「爆弾映画」
今回のテーマは「爆弾映画」。
文字通り爆弾をめぐる攻防を描いたシロモノであり、爆破映画の中でも極めて爆破描写の多いジャンルである。前回紹介した『スピード』がまさにそれで、バスに仕掛けられた爆弾をめぐるサスペンス、爆弾魔との対決がストーリーの軸となっている。
ハリウッドでは同時期に同系統の作品が乱立する「マーケティングかぶり」がまま見受けられるが、『スピード』公開時はこの「爆弾映画」が旬であった。今回紹介する『スペシャリスト』『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』はいずれも『スピード』と同じく1994年に公開され、今日まで爆弾映画の代名詞として語り継がれている。
謎の美女に両親の敵討ちを依頼された爆破請負人が愛に溺れながらも復讐を代行していく・・・。「セクシャル爆破アクション超大作」というフレコミも話題となった誰得映画、それが『スペシャリスト』だ。
元CIAの爆破工作員、現在はフリーの爆破請負人という何とも親不孝な主人公を演じるのはご存知シルベスター・スタローン。依頼人の美女に『氷の微笑』で一躍セックスシンボルに踊り出たシャロン・ストーン。「セクシャル爆破アクション超大作」とはよく言ったもので、この映画の魅力は華麗なる爆殺テクニックの数々と激しい濡れ場に尽きる。
ライトな映画ファンを一切寄せ付けない実に高尚な組み合わせである。拳ではなく爆弾で敵を葬るスタローンに漢を見ることが出来るか、ステロイド強化人間の全裸セックスシーンに耐え得るか、このあたりが鑑賞に際する「ふるい」と言えよう。
▲時にはマグカップに。
▲時には地雷で。
▲時には駐車場のパーキングに。
▲吹き飛ばされるターゲット。いかにも人形なチープさがたまらない。
▲問題のラブシーン。
▲貴重なスタローンのケツ割れショット。
▲抜群に気持ち悪いスタローンの絡み。
▲ラストは主人公の根城を舞台に爆破祭り。
▲ラストはヒキの爆破ショットで〆るのが爆破映画のお約束。
続いて『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』。こちらは打って変わって爆弾魔VS爆弾処理班という直球勝負・・・と思いきや、一筋縄には行かない。この二人、もとはIRA(北アイルランド共和軍)に籍を置いていた過去があるのだ。
幼い頃から爆弾作りを仕込まれた戦友同士の二人だが、一方は正義に、一方は悪の道に進むのである。同じく爆弾魔VS警官の対決を描いた『スピード』が至ってシンプルな話だっただけに、こちらはかなり重厚な印象を受ける。
さらに言えばこの映画、爆弾の発火メカニズムや凝ったギミックなど爆弾の内部構造にやたらとフォーカスを当てる誰得描写が目立つ。見る者を選ぶ変態度合いは『スペシャリスト』を遙かに凌ぐ、まさにキングオブ爆弾映画といったところか。ラストを飾る廃船の大爆破は、爆破映画ファンが選ぶ「最高の爆破1位」に挙げられるほど圧巻なので、こちらも注目だ。
▲同じ文字列をタイプし続けなければ爆発する仕掛け。
▲ヘッドフォン爆弾。奥のスピーカーに仕掛けられた第二の爆弾と連動している為、両方同時に解除しないとボン。
▲人間爆弾。腹部のタイマーはおとりで、
▲腰の筒が起爆装置。中央の玉が左右どちらかに振れると爆発する。
▲犯人の凝った罠にことごとく敗北するボストン警察。
▲平和なボストンの町は一変して地獄と化す。
▲何が爆発するか分からないという恐怖演出も見所。
▲電球にフォーカスを合わせ客の不安を煽る。
▲これを差し込んだら・・・?
▲ボタンを押したら起爆するのか・・・?と、ひたすら煽りまくる。
▲犯人はこいつ。演じるトミー・リー・ジョーンズのキレっぷりが凄まじく、宇宙人ジョーンズと同じ人とはとても思えない。
▲その根城がこの廃船。船体全部を使った入魂の起爆装置が見物だ。
▲コップ一杯の水銀から全てが始まる。
▲ついに本体に着火。ピタゴラ爆弾が炸裂する。
言うまでもなく興行的には振るわなかった両作。共通して言えるのは、単純なアクション娯楽と一線を画す余分な「ちょい足し」。分かりやすい『スピード』に軍配が上がったのも無理はない。
だが、裏を返せばそれは、我々爆破ファンに宛てたラブレターとも受け取れる。爆破を愛する者にこそ見てほしい、そんな作り手の願いがあったとすれば何とも泣かせる話ではないか。いずれにせよ極めてツウ好みの一本には違いないので、鑑賞に際しては十分に注意して頂きたい。
ツイート- 発破爆破ノ介
- 『バックドラフト』を観たあの日から、爆発映画の虜になって云十年。CGがはびこる現代に『本物の爆発』にこだわる求道者。モチロン携帯着信音も爆発音。
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