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第二十六話

 

 

 有田は、目の前のカーテンを指でわずかに捲ると、そこからスマホをそっと差し入れた。

 平松の兄は床に跪き、女装子のイチモツの前で大きく口を開いている。

 有田がムービー録画のボタンを押した直後に、飛沫が跪く男の中へと放たれていった。

 男は、硬くなった自分のモノを握り締めながら恍惚とした表情を浮かべた。

 その表情は、雑誌の表紙に載せるキャッチコピーを考え悩んでいる時の平松を思い起こさせた。

 顔も体型も似ていて、目を閉じ眉間にシワを寄せる時の眉毛の動きまで同じ。しかも名前は共に「Hiramatsu」。

 翌日、机の上に有田が置いたプリントアウトされた画像を見て、編集長の平松は凍りついた。

 「な、何の真似ですか、有田さん」

 平松は小さな声でそう言うと、机の上の紙を右手でグシャッと丸めた。

 ゆきは、自分のモノに吸い付いている柏木由紀に似たキャバ嬢に目をやった。

 キャバ嬢の乳房は四つん這いになっても決して垂れ下がることはなくパンパンに張ったままその大きさを誇示していた。

 「さあ、ゆきさん、オシッコしてごらん」

 そして、

 「館林のマル秘基地で、コーちゃんにも飲ませてあげたんでしょ」

 と、付け加えた。

 コーちゃん。たしかにあの男は多々良書店にいた仲間からそう呼ばれていた。しかし、それが東京の出版社で編集長をしている弟の宏治という名前から取られたものがあることは、自分以外に知る人はいないに違いないとゆきは思った。

 ゆきが下半身の筋肉を緩めると、尿道を勢いよく熱いものが流れていった。

 目の前では、柏木由紀に似た美女が目を閉じ、恍惚の表情を浮かべている。

 間もなく、イチモツを咥えていた美女の口の両側から、薄黄色の生温かい液体が溢れ出し、首筋を伝って床のカーペットを濡らしていった。

 男のまま生きていたら、柏木は、こんな美人キャバ嬢とセックスはおろか、手を繋ぐこともなかっただろう。

 それが今、その女の口に小便を放っている。

 それも全ては、あの日、自宅近くのスーパー銭湯にある「瞑想サウナ」で、膝の上にタオルを畳んで置いたのが始まりだった。

 もう、それ以前の生活には戻れない。あの頃は、一体何を楽しみにして生きていたのか思い出そうとしても何も出てこなかった。

 平松の兄を乗せたタクシーが大塚のホテルに到着した時には、西の低い空にあるはずの月は駅前の雑居ビルの後ろに隠れ、その姿を見ることはできなかった。

 ロビーのソファーには、紙袋を抱えたまま片手でスマホを弄っている弟の姿があった。

 弟は兄に気付くなり

 「この金は不要になった。返すから、今回のことは忘れてくれ」

 と言うと、紙袋を兄に押しつけ、足早にホテルを去って行った。

 平松は、こんな時間まで兄がどこに行っていたのか聞くことはしなかった。聞かなくても、おおよその想像はつく。それにその話をすれば、自分の秘密も兄に気付かれてしまう恐れがあると感じていた。

 ゆきのイチモツを咥えていたキャバ嬢は、口の中にアンモニア臭のする塩辛い液体を含んだまま、全身をビクンと大きく痙攣させ、絶頂を迎えた。

 「本当にあなたたち変態ね、今日は朝までオシッコ祭りにしましょうか、フォッフォフォフォ」

 先生は、京華が女装子の小便を口の中に流し込し込まれてイッたことに満足そうだった。

 「オシッコ祭りだから、コーちゃんも呼んであげましょうか。あの男、兄弟揃って変態なんですから」

 先生がサラッと流したその言葉に、2人の美女たちは特段の反応を見せなかったが、キャバ嬢の口の中にあったゆきのイチモツは急速に縮んでいった。

 兄弟。

 「先生」は、弟の平松のことも知っている。そうであるなら、自分がその弟の部下であることも知っているのだろうか。

 一体、誰が何を知っていて、誰と誰がどう繋がっているのだろう。

 ゆきは、射精した直後ということもあってか、背中に重たい荷物がのしかかってきたような疲労感に襲われていった。

 「先生」は、快感の余波と共に全身をヒクッヒクッと漂わせている京華の口に足の先を差し込んで指を舐めさせながら、スマホを手にしていた。

 

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志井愛英
小説家。昭和41年生まれ。同性愛者、風俗嬢、少数民族、異端芸術家など、マイノリティを題材にした作品が多い。一部の機関誌のみでしか連載しておらず、広く一般に向けた作品は本篇が初。

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