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第十六回 「NASAの最先端無毛ツルツルまんこ」

 

■ オナホに込める生き霊をさがして

 理想の女の子を作るには、軟質素材成型などの工学的な知識だけでなく、モデルとなる現実の女の子をサンプリングするフィールドワークが必要だ。

 ワタシがエロ雑誌ライターとなってしばらくまでは、仕込みナシで読者が街中で女の子のスナップを撮影、投稿、掲載ということが当然のように行われ、それを前提とした雑誌ジャンルが存在していた。たとえば「スーパー写真塾」という誌名にその名残が見える。

 当時の投稿ページは、被写体の女の子は掲載に同意するどころか撮影者は見ず知らずだし、カメラに気づいてすらいない。スナップとはそういうものだ。

 ワタシは学生の頃から工作も好きだったが、街中でハッとするような美少女を見かけるたびに、見過ごすだけではもったいない、と気づいていた。カメラを回しておけば見返せるのに、なぜ撮影しないのだ?

 しかしながら、パンチラを狙うスポーツ的な撮影には興味はない。

 望むなら、自分が軟質素材で少女人形やオナホを作れるようになった時の元ネタ、人形に込める生き霊だ。

 原型となる特定の「誰か」のデータを収集したいのだ。

 顔や見た目だけではない。「誰か」に恋し、その人らしさの断片を練って部分偏愛にまで高め、製作物どころか自分に取り込みさえしたい。スローオナニーの考え方である。

 ワタシは中学時代から大学卒業、社会に放り出される間、オナホへの情熱が薄くなった時期があった(昭和59年~平成4年頃)理由は、少女のデータ収集をより重視していたからだ。

 ジュニアアイドルのように運営に管理され見世物になっているのではな い、素の存在の少女。1対1で向き合える少女がほしい。

 その願いを粉砕するように規制は厳しくなっていき、知り合うことも住所交換をすることも危険になる。

 ワタシにとって、日帰り旅の一期一会の関係で声掛け写真サンプリングをするのが最後のささやかな楽しみだった。宝探し感覚だ。

 それすら「声かけ事案」と称して犯罪視するようになった地域住民を、ワタシは憎む。もう何も楽しいことがない。

 カネを払い、地下ジュニアアイドルの撮影会で似たようなことができるとしても、それは前提条件から別物だ。

 こうして苦しんでいる間にも、自分は老いていく。

 圧倒的閉塞感。

 どんな才能や努力も、この逆境には無力だ。

 好きなことを思うようにできないと、人間はダメになる。

 そして、ダメになった。わかるか。

 

■ オナホ界の黒船、ドックジョンソン襲来

 ライターになりたての頃に話を戻そう。

 エロ雑誌といえば、白黒ページのサブカル読み物がつきものである。
 担当編集のKも、サブカルページを手伝っていた関係で机に変なグッズを並べていた。

 そんな中、1995年だったか、アメリカ直輸入のオナホが紹介され、衝撃を受けた。

 当時の日本製アダルトグッズはほとんどがゴム製ちくわとでもいうべき代物。小さな筒の入り口に、まんこビラビラもデフォルメしてあったり、花の形になっていたり。自主規制なのか、全体にオモチャ然としたうさんくさいものだった。職人が彫塑して作ったデフォルメ女体はテイストを変えつつ も、現在でも多数を占める。

 それに対してエロの本場、アメリカのオナホは規制などない。雑誌に紹介された製品は、きちんと女優の型取りで作られていた。筒状ではなく、ドテ部分も含んだまんこの一番きれいな部分だけを切り取った形である。

 型取りをするためには、陰毛を完全に除去しなければならない。

 つまり、製品は無毛のツルツルまんことなる。

 原型がビッチ大人とはいえ、肌色素材のゴムのツルツルまんこで黒ずみもないとくれば、製品は女児に近い。

 大人に興味がないワタシだって、そりゃ興奮しますわ。もうたまんねえっすわ。

 オナホというものが一般に認知される前だ。なぜこんなものが作られたかのストーリーも説明される。

曰く、ハリウッドのSFX技師がブラックジョークで作った。

紳士淑女がパーティ会場にディルドとセットで置いてHAHAHAと笑い合う。

素材はお決まりのNASAで使われる最先端の……

 今なら苦笑ものだけれど、型取りの迫力は作り話をも真実に変えてしまうほどだった。

 現地アメリカではポルノ女優の型取りオナホがブランド化され、中でもドック・ジョンソン・ノベルティ社が最有力。サブカル記事は、そのドック・ジョンソンの型取りオナホを代行輸入する業者が現れた、アメリカにはこんなものがあるんだぞ、という主旨であった。

 素人がそのまま個人輸入すれば、日本の税関が黙っていないだろう。チェックをすり抜ける何らかの手段、大量の混載物に紛れ込ませるなどの工作が可能な業者だった。

 ワタシはその柔らかさと型取りならではのホンモノ感に心を奪われ、自分も購入できないか、と編集に取り次いでもらい、1コーナーの原稿料の代わりにそのオナホを受け取った。今でもそのオナホはワタシの宝物になってい る。

 

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これが入手後20年近く経過し、数ヶ月に1度使用しているのに形状を保持しているドック・ジョンソンの型取りオナホだ。CyberSkinという素材名のタグが添付されている。形崩れしにくい形状名ことを差し引いても、驚きの保存性。柔らかさを保ち、感触劣化もほとんど見られない。

アマゾン→ Doc Johnson Kobe Tai Vibrating Ultra Realistic Vagina Multi-Speed Adult Sex Toy Kit

 

■ 内部構造をこじらせろ

 オナホの内部は、膣内に石膏を入れて型取りするわけにはいかない。

 アメリカ人も工夫して、入れた感じを再現するための内部構造を作り上げた。
 非常に微妙なものだ。ヒダもイボもないが、粘土を無造作に丸めたようならランダムさが見られ、中程には成型の都合でできたバリのような突起もある。

 手抜きだろうか? それでいてローションの絡みは良く、入れた感じも穏やかな粘膜感。日本のネジヒダオナホと違い、削り攻撃がなくて低膣圧。本物のマンコってこうなんだー、と勉強になった錯覚すら感じた。

 型取りオナホは童貞を獅子に変える。

 型取りされた事実にウソがなければ、見せかけのリアリティ以上の背景を語れれば――あんな内部構造なのに、オナホはユーザーをそこまでのめり込ませることができるのだ。

 アメリカンポルノは結合部のクローズアップにこだわると聞く。オナホなら人体から型取りするのが一番と考える。そんな直接的なアメリカ文化に対し、編集のKは「肉食バカ」と表現、「お前ら肉ばっか食ってるからこんな商品になるんだな! 日本のような奥ゆかしい萌えはわからんだろう!」とdisった。

 日本の奥ゆかしいオナホはどうなるのっというと、2000年代になってワインディング構造が登場するまでは、工業的なネジヒダやイボばかりだったんだけどね。

 内部構造の歴史は、「オナホール戦記」第一部第七話「抽象概念をホール化せよ」に書いた。
http://vobo.jp/onaho-rusenki07.html

 

 2014年の成熟したオナホ市場にあっても、シンプルネジヒダのジョリジョリ摩擦が生み出す気持ちよさは鉄板であり、定番商品である。ここからどれだけ逸脱できるか、まさにクリエイターのオナニー状態が展開されている。

 日本のオナホはワインディング革命以後、内部粘膜の見た目もホンモノ人体に近づける方向と、ちんちん刺激至上主義の異常構造の二手に分かれた。

 今や商品企画では、入り口を指で拡げ、くぱぁしてどれだけ見た目がエロいか、気持ちよさそうに見えるかが問われる。見ただけで性感が想像できるオナホ脳のお客様を唸らせなければならないのだ(そのような状況が実感できないとお困りの方、器具田研究所のコンサルテーションをご利用ください!)

 アメリカのオナホは通販サイトを見る限り、20年を経ても進化を感じな い。

 外観もむしろ型取りから造形師の彫塑に置き換わり、見た目は劣化しているようだ。

 ただし向こうには向こうの流儀がある。

 型取り式オナホとは別に、日本で言う手持ちホール、ちくわ型のオナホカテゴリーが生まれていて、軟質の貫通オナホを硬いプラスチックタンブラーに納めて使用するというもの。

 TENGAのようなオナカップで、洗浄再利用できるものだ。

 日本のオナホをアメリカに輸出しても、コレは中身のパーツだけじゃないか、外のプラスチックケースはどうしたんだい、と笑われてしまうくらいにケースが必需品になっている。

 むき身だとベタつくし、ケースに入れれば膣圧も締まるからね。そういう考えもあるんだね、と。

 

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※アメリカの標準的オナホール、フレッシュライト
https://www.fleshlight.com/fleshlight-toys/

器具田こする教授
ラブドールとオナホールのR&Dアートユニット「器具田研究所」を運営。メーカーへのアドバイスや技術協力といった説明のしにくい業務でオナニー業界の異常進化を支えている。http://www.kiguda.net/

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