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第三話

翌日、柏木は、編集長の平松に、取材に出掛けるとだけ言い残し、一人で上野に向かっていた。

上野に着いて、広小路口の改札を出ると、4、5分歩いたところに、すぐに目的のビルを見つけることができた。

柏木は、それまでも、そのビルの前を何度も通ったことはあったが、その時は、単なるポルノ映画館が入っているビルだとしか思わなかった。

AV全盛で、ネットで無料ポルノも見放題のこの時代に、一体誰がポルノ映画館なぞに足を運ぶのだろうと、心の隅で思っていた。

しかし、昨夜、発展場のサイトを巡っていくうちに、何度も上野のポルノ映画館の名前を目にした柏木は、そこに、自分の知らない世界が広がっていることを確信したのだ。

そのビルは、一階と二階が、それぞれ一館ずつの映画館となっていたが、柏木が目指したのは、二階の方だった。

自販機で入場券を買うが、5百円と、異常に安い。

もぎりのおばさんに入場券を差し出し、ロビーの方に視線をやると、初老の男性が4、5人タバコを吸っているのが目に入った。

こんな平日の昼間でも、人は入っているようだ。

ポルノ映画館自体、柏木には初めての体験だった。

柏木は、右手の親指と人差し指で、鼻の頭を左右から摘んだ。それは、柏木が、緊張する時に無意識にしてしまう癖だ。

柏木は、取りあえず中の様子を見てみようと、黒く重たい防音扉を押した。

柏木の目に入ってきたのは、まるで、満員電車のような人混みだった。

座席には、まばらにだが、空席がある。しかし、通路には、人がぎっしりと立ち、前に進めないほどだった。

客は、ほとんどが、60歳以上の年寄り。

27歳の柏木は、ただ一人だけ、飛び抜けて若い。

スクリーンでは、中年の女が、自慰に耽っているが、それを真剣に見ている客は、わずかしかいない。

座席の客の何割かは、隣の客と、何かしていた。

よく見ると、お互いのペニスを扱き合っていた。一人の男に、三人が群がって、ペニスや乳首を舐めている様子も目に入ってきた。

柏木の下半身にもすぐに、手が伸びてくる。

それを払いのけるようにして、人混みを進んでいく間にも、次から次に、手が、柏木のペニスや尻を、ズボンの上から触ってきた。

やがて、周囲を数人に囲まれた柏木は、映画館の後方の隅で動けなくなってしまった。

すぐに、手際よく、柏木のベルトが外され、ズボンが下ろされていった。

ボクサーパンツの上から、二人の男、いや、二人の老人が、柏木のイチモツをまさぐっていく。

それでも柏木は、勃起しなかった。老人たちの頭髪から漂う、MG5だか、アウスレーゼだかの匂いにむせて、吐き気を催してきたのだ。

柏木はここでも、ギリギリまで耐えてみようと思った。

ゲイでもない自分が、どうしてこんなところに足を踏み入れたのか、柏木にも明確な答えはない。

ただ、強いて言えば、壁の向こうを見てみたかったということになるだろう。

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老人たちに身を委ねながら、柏木は、視界に入ってくる光景を、脳裏に焼き付けておこうとした。

唇に吸い付き、時折舌を絡め合う、二人の老人が、向こうの壁際にいた。

50代前半の太った男の前にしゃがんで、熱心に、その男のペニスを口に含んでいる70歳以上に見える老人もいる。

数人の男らは、相手を求め、キャロキョロと周囲を見回しながら、混雑する通路を行ったり来たりしていた。

すでに、柏木のイチモツは、少しずらされたボクサーパンツの上から露出し、一人の老人に、シコシコと扱かれていた。

なかなか勃起しないため、別の老人が腰を屈めて、柏木のモノに吸い付いていった。

柏木の周囲には、順番待ちの男が3、4人はいる。

若い柏木は、汗臭い男子高校の文化祭に一人でやってきた、ミニスカート姿の女子高生のようなものだったのかも知れなかった。

自分のペニスに、老人の舌と唾が絡んでいく感触は、ただただ気色悪かった。

しかし、セックスの対象として、これほどまでに求められていることに、悪い気はしなかった。

昨夜の瞑想サウナでも、薄々感じてはいたが、モテるということは、こういうことなんだと、柏木は、今、はっきりと確信した。

柏木は、今まで、女にモテたことは一度もない。

そのせいかどうかは分からないが、街を歩いていても、常にアウェイな気がしていた。

疎外感と言い換えることができるかも知れないが、アウェイという方が、柏木の気持ちに合っていた。

誰も自分のことなど見ていないし、誰も自分を求めていない。オシャレな女や、モテそうな男が闊歩している新宿や渋谷を歩く時などは、自分が場違いな所にいるような気さえしていた。

束の間の優越感に浸っていた柏木の顔に、頭の禿げ上がった60男の顔が、ぬうっと近づいてきた。

唇を尖らせて、柏木の唇を求めている、60男の唇の隙間から放たれた、歯肉炎の臭いが、柏木の鼻腔を直撃した。

そこが、柏木の限界だった。

 

柏木は、慌ててズボンを上げると、人混みを掻き分け、映画館の外に出た。

映画館の外は、いつもと同じ、見慣れた世界だった。

不忍池に咲く、赤い蓮の花が、とても綺麗だった。

志井愛英
小説家。昭和41年生まれ。同性愛者、風俗嬢、少数民族、異端芸術家など、マイノリティを題材にした作品が多い。一部の機関誌のみでしか連載しておらず、広く一般に向けた作品は本篇が初。

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