第二十三回 「便意」
年を取ると涙腺が緩むというが、私の場合、肛門のほうが緩んできた。
若い頃、公衆便所で小便をしていると、隣で小便中のおっさんが平然と放屁するのを見て、なんとデリカシーのないことかと辟易していたが、今や私がそんなおっさんだ。
小便中は肛門が緩みやすいのか、屁が出そうと感じるか感じないかもあやふやなうちに、情けない音を鳴り響かせてしまう。
肛門括約筋が衰えたのだ。
私は一日に2~4回は排便する。
食事とセットのように便意を催すのだ。
朝なかなかの量を出したから今日はもう排便しなくてすむかと思いきや、そうは問屋がおろさない。昼や夜に、朝を遥かに凌ぐ量が出ることもしょっちゅうだ。
ピーターの「夜と朝のあいだに」のアンサーソング「朝と夜のあいだに」を発売したい。
歌は自信ないが、私の排泄音はピーターの歌声に負けず劣らず低音が効いている。
冗談はともかく、一日に何度も排便する私にとって、肛門括約筋の衰えは深刻な問題だ。
トイレに向かう途中、尻の割れ目にウンコが挟まっているのを自覚する回数も増えてきた。
トイレで確認すると、不思議とパンツにウンコは付いておらず、尻が割れている理由はなるほどこういうことかと気づかされるが、せっかくの神の計らいも、いずれ台無しにしそうだ。
尿意も若い頃に比べて我慢がきかなくなってきたが、尿意については私なりの対処法がある。エロい事を考えるのだ。
男は尿と精液がどちらもチンポから出るので、エロい事を考えることによって、金玉が臨戦態勢に入り、尿意を迎えるのではないかと思っている。
しかしこの方法は便意には通用しない。役に立たないどころか、却って便意を促進させる効果があるのだ。詳細は不明だが、おそらく興奮と便意には因果関係があるのではないか。
本屋に行くと便意を催す人は多いようだが、私もその一人だ。
その理由はいくつか挙げられているが、どれも決め手に欠け、未だ原因は解明されていない。
この話題になると必ず、本のインクの匂いに誘発されるという説が挙げられるが、私は全く信じていない。
私は本屋に行くと様々なジャンルで、まだ読んでいない大量の本があることにワクワクする。好奇心を刺激され、血がたぎる感覚をはっきりと感じる。
そうすると瞬く間に便意を催す。
やはり興奮が便意に影響しているのだ。
興奮して血がたぎることが腸や肛門に大きな影響を及ぼすに違いない。
長年の謎を解明する時が来たようだ。
しかし、エロビデオ屋に行き、大量のエロビデオに囲まれて便意を催した経験は全くない。エロビデオ屋にいる時の私は少なからず興奮しているにもかかわらずだ。
新日本プロレスの中邑真輔は、しょっちゅう「たぎってる」が、リングでクソを漏らしたというこぼれ話は聞いたことがない。
書物による知的興奮は便意を促進し、エロビデオによる性的興奮や、ストロングスタイルの継承者としての「たぎり」は便意に影響しないのか。
いや、でも先述の通り、便意を催している時にエロい事を考えると私は便意がより強くなるし、新日本プロレスの中継が金曜夜8時台だった頃、手に汗握っているうちに便意を催して肝心な場面を見逃したことも数え切れない。
つまり・・・
どうなってんだ、このやろうーーーーーー!!!
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- 殿方充
- 芸人。「浅草お兄さん会」第6代チャンピオン。「下ー1グランプリ」第1回、第3回優勝。4才よりオナニーを継続中。
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