第六回 「筋肉と爆薬」

 

・2人のアクションスター

アーノルド・シュワルツェネッガーとシルベスター・スタローン、ハリウッドを代表する2人の筋肉俳優をスターダムに押し上げた影の立役者と言えば、そう爆薬だ。1ポンドのステーキ肉も火を通さなければただの肉塊に過ぎない。グリルしてこそ初めて肉汁したたるステーキとなるのだ。俳優もまた然り。これは真理である。

 

2人の代表作と言えば『ターミネーター』シリーズや『ランボー』シリーズが真っ先に挙げられる。爆破映画を語る上で決して外せないラインナップではあるが、今回は割愛させていただく。ここで紹介しているのは、制作者の比類なき発破愛が生み出したBig Mistakeに他ならないからだ。そこで今回は、コアなファンも多い『コマンドー』と『デモリションマン』を取り上げる。米軍特殊部隊の「コマンドー」に、「デモリションマン」は直訳で”壊し屋”。古き良きハリウッドを感じさせる実に愚直なタイトルである。

 

 

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▲やたらと賑やかなポスターからも作品の熱気が窺える

 

・「何が始まるんです?」「第三次大戦だ」

シュワルツェネッガー主演『コマンドー』。午後のロードショーでお馴染みカルトな一品だ。この映画の傑作たる所以はままあれど、一つには驚くほどの「ひねりの無さ」が挙げられる。シュワ演じる主人公のジョン・メイトリックス大佐は数々の戦績を誇る元コマンドー部隊長。今は娘と二人で仲睦まじく山小屋で暮らしている。ところが、この娘が悪党にさらわれてしまう。怒ったメイトリックスは完全武装で敵の根城に乗り込み、一味を完膚なきまでに叩きのめし、娘を奪還するのだ。どんなに深遠なテーマや奇をてらった筋書きも、映画的快楽においてこのシンプルさには到底叶わない。それでは早速見所を紹介したい。

 

 

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まずは冒頭、シュワの登場シーンに全てが象徴されている。上腕二頭筋のアップからチェーンソー片手に丸太をかつぐシュワのミディアムショット――。清々しいまでの無骨さ。「お魚にしますか、お肉にしますか」そんなまどろこしいことは一切尋ねない。有無を言わさず肉を食え、そんな映画なのである。

 

 

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▲動かない4WDを手押しで発進させる

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▲ヒロインの車で敵の尾行。目立たぬよう座席を剥ぎ取る繊細さに萌える

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▲「利き腕じゃないからいつまで持つか分からんぞ」左腕一本で敵を崖から吊るす鬼尋問

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▲ドジっこヒロイン決死の協力

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▲お決まりの逆噴射。屈指の名シーンの一つだ

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▲敵のアジトに潜入。海パンである必要性は一切確認できない

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▲完全武装完了

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▲隠密行動とは程遠い武装ぷり

 

敵の総本山に乗り込んでからは怒涛の波状攻撃が展開する。ハンドガン、ライフル、ショットガン、ナイフ、ナタ、ロケット弾、手榴弾、地雷とまるで歩く武器マーケット状態。どんなに見通しの良い場所に立っていても敵の弾は一切当たらないチートっぷりだ。

 

 

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ラストは宿敵ベネットとの一騎打ち。「来いよベネット!銃なんか捨ててかかって来い!」の名言が飛び出す。対するベネットの顔芸と「野郎、ぶっ殺してやるぅう!」のシンプルな返しも愛嬌たっぷりで実に良い。最後は映画史に残る伝説の殺し方が用意されているので、是非その目に焼き付けて欲しい。

 

 

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▲「来いよベネット!銃なんか捨ててかかって来い!」

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▲「野郎、ぶっ殺してやるぅう!」

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▲通称「蒸気抜き殺法」。後にいくつもの映画でオマージュされ、殺しの定番となった

 

 

・ところでトイレの貝殻、あれは一体何なんだ?

近未来SFアクション大作『デモリションマン』。暴力はびこる混沌の20世紀は終わりを告げ、平和な新世界が確立した21世紀。ところが、水面下で進行する巨大な陰謀により、冷凍刑に処されていた20世紀最大の犯罪者、サイモン・フェニックスが甦る。対処に窮した警察は、同じく冷凍刑に服している20世紀最大の暴力刑事ジョン・スパルタンを解き放つ――。

 

 

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スタローンの出演作では唯一の「ディストピア」もの。非暴力世界に甦る暴力刑事というアイデアが抜群の一品だ。つまり、スタローンの強靭さを際立たせるために、あえて真逆の舞台設定を敷いたのである。ちなみにこの映画のプロデューサーはジョエル・シルバー。『ダイ・ハード』『リーサル・ウェポン』『マトリックス』シリーズを送り出したハリウッド屈指の名プロデューサーだ。奇しくも先に紹介した『コマンドー』も彼の作品である。

 

 

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▲彼なくして数多のアクション・スターは生まれなかった

 

さて、まずは「混沌の20世紀」の描写に注目したい。ハリウッド映画においてロサンゼルスは「暴力の象徴」として描かれることが多いが、この映画はその最たるものと言って良いだろう。何しろファーストカットがこれだ。

 

 

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燃え盛る「HOLLYWOOD」のランドマーク。その向こうに見えるロスの街は各地から火の手が上がっている。この死の町で悪と戦っているのが、主人公のスパルタンである。宿敵フェニックスとの死闘が最初にして最大の見せ場となっており、ホンモノのビルを丸ごと吹き飛ばす桁違いの爆破を堪能できる。爆破シーンというより、発破解体の記録映像だ。

 

 

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死闘の末に2人は冷凍刑に処される。そこで初めてタイトルロールが流れるのだが、延々と氷漬けにされたスタローンの裸体を拝まされる親切設計となっている。前回紹介した『スペシャリスト』と言い、兎角スタローンは脱ぎたい願望が強いと見える。

 

 

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21世紀に甦ったスパルタンは、世界の変貌ぶりに愕然とする。警官は戦闘能力を持たず、銃は博物館に展示されているのみ。汚い言葉には罰金刑が課され、人々は謎の着物を着用し一様に穏やかな表情を浮かべている。疫病の蔓延を防ぐべく生殖行為は禁止され、トイレには謎の貝殻。もう何が何だか分からない。ちなみに貝殻の用途は最後まで明かされない。今回は、この麗しき未来社会のガジェットの一つ、「バーチャル・セックス」でお開きとしたい。

 

 

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▲セックス禁止の世界で唯一得られる性的快楽、それがこいつだ。

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▲神経を刺激し、互いの性エネルギーを交換し合うという夢のような装置。

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▲サブリミナル的に挿入される性描写。一瞬しか映らないため非常にもどかしいが、幼少期はこの場面でお世話になったという方も多いのではないだろうか。

発破爆破ノ介
『バックドラフト』を観たあの日から、爆発映画の虜になって云十年。CGがはびこる現代に『本物の爆発』にこだわる求道者。モチロン携帯着信音も爆発音。

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