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第八回  「飯山満の2つの沼」

 

 

■寄せられた沼の情報

 

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▲今回は、千葉県船橋市の飯山満(はさま)に訪れた。この地域は深田のため、子どもたちに「帽子が田んぼに落ちても絶対に取りに入ってはならぬ」と言ったほどで、大人でも一度はまるとなかなか抜け出せなかったそうである。

 

青森の不動産業に勤めるというMさんから寄せられた沼の情報。

ある男性がワープロにのめりこむ姿勢で椅子の上で亡くなっていたという。

亡くなっていた男性は一人で住んでいたため発見が遅くなり、すでに形状はぐずぐずになり体液や血肉、それに糞尿までもがキーボードや椅子のスポンジに染みこみ、あふれ出したものが流れ落ちて床に大きな汁溜まりをつくっていたという。

その汁溜まりから無数のウジ虫が這い出して放射状に広がっていた。

白乳と黒ゴマの2色のウジ虫がもぞついて、まるでお経が踊っているように見えて身震いしたという。

「その汁溜まりもまた沼と呼んでもよいものであろうか?」というのが、Mさんが寄せてきた情報の裏に隠された本趣だとしたら、それもまた沼の一種であるという返答となる。

ホ-ムページを見た読者からこのような反応が寄せられるようになってきたのは喜ばしいことである。

 

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▲飯山満駅周辺地図。駅の北側と南側にある2つの沼地が今回の目的地である。いずれの沼にも名前はない。駅周辺では1992年1月13日から船橋市を施行者として地区土地区画整理事業が行われている。しかしながら地権者の反対などで開発が滞り事業が長期化したことから、早期完結を目指すべく現在計画の見直しが進められているという。どこか物騒でよそよそしい駅の周辺。

 

■沼とそれ以外のもの

 

沼の情報を聞きまわっていると「沼とはなにか?」という質問をよく受け る。

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▲ときおりドブの匂いが風に乗って鼻孔をなでる。これでもかと発光するマミーマート。道をはさんだ反対側には、芝山団地第一汚水処理場と沼地。

 

たとえばフランス語の名詞は、全て男性・女性どちらかの性を持っている。「fille(少女)」は女性、「garcon(少年)」は男性など、もともと性を持っている名詞はそのままの性に分類される。

<男性名詞>
chapeau (帽子) 頭の突起物 註:沼田
chocolat (チョコレート) 甘くて黒い 註:沼田
poisson (魚) そのヒレが止まるとき 註:沼田
arbre (木) 水を吸い上げて戻す 註:沼田
etc.

<女性名詞>
etoile (星) 嘘っぱちの輝き 註:沼田
gare (駅) 行き交う人々(誰でもよかった) 註:沼田
montre(腕時計) 執拗に絡む蛇 註:沼田
chanson (歌) やがて哀しい犬吠え 註:沼田
etc.

<女性名詞の国>*「e」で終わる国の名前は女性名詞
Allemagne (ドイツ)
Chine (中国)
Espagne (スペイン)
France (フランス)
Italie (イタリア)

フランス語の名詞の分類を真似て、沼 ≒ 池(沼以外のもの)の対応表を作成してみた、「沼とはなにか?」の答えに近づけるものになるだろうと思っている。

 

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▲かつては未開地であり、山奥だがお米が取れる良い土地ということで、「ごはんが山に満 る」を理由に、地名の飯山満と由来しているという説があるということだが、実際には「谷あいの場所」=「狭間(はざま)」からついたものであると考えられている。ちなみに、土地の境界線上(間)や十字路には、この世のものではないものが寄りつくといわれている。

 

 

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▲駅前に広大な沼地が広がり、街の雰囲気を台無しにしている。土を掘りくぼめて穴(土坑)をつくり、そこに人の遺体を納めて葬送した遺構がこの付近で200個あまりまとまって見つかったとされている、おそらくこのあたりにはかつて墓地があった。

 

対応表は、沼 = 女 からはじまる。

<沼>
女/女性器/排泄物/死者(幽霊)/枯れた木/もや/湿気/夜/あいまいなもの/へどろ/肥溜め/醜女/自殺/日本/土着/路地/小山遊園地/脳/ゴキブリが入ったラーメン/蟻の行列を踏みつぶす子供/不幸な事件/滅亡
etc.

<池(沼以外のもの)>
男/男性器/おなら/生者/元気な木/霧/乾燥/昼/晴天/はっきりしたもの/湧水/水たまり/ハンサム/自然死/アメリカ/都市/ディズニーランド/身体/割烹料理/お行儀のよい子供/幸せな生活/繁栄
etc.

この分類はどこまでも続いて更新されていくと思われる。

 

■汚水処理場のある沼と

 

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▲今回の最大の目的地である、2つめの沼に向かう。さびしげな道の突きあたりに沼地があるらしい。

 

汚水処理場のある沼地をみて回った私は、今回の本当の目的地である2つめの沼に向かった。あれからどのくらい経ったのか、もう分からなくなってき て、とても恐ろしい。

 

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▲東葉高等学校が近くにあるため、女子生徒の姿がちらほら見受けられた。日が暮れてくると沼だけが持つ独特のあやしい雰囲気があたりを包み込んでいった。

 

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▲フェンスで覆われた沼地、ゴミが散乱している。この街のすべてを集約したような空気が漂っている。

 

あたりはだんだん暗くなり、人の顔がのっぺらぼうのようになってきてその本性をさらけだしてきたように思う。

駅から東葉高等学校へと向かう線路沿いの通学路にある窪んだ地形、その底に沼を確認することができた。

 

■邪悪ななにかが集まる場所

 

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▲木に結びつけられた衣服。浮浪者が生活しているのかと思ったが、それらしき姿はなかっ た。横を通りすぎていった女子生徒が振りかえり、カメラバックを抱えた私を誘惑するような目でみていた。

 

柵が設けられているその沼地はすり鉢状の地形となっており、学校のある東側が小高い丘となっているためいつでも暗くて鬱陶しく、「きっと良くないことが起こる」予感がした。

 

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▲沼地のすぐ近くにはまるで何かを隠すように高く黒い柵に囲まれたお墓があった。

 

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▲Google Earthでみるお墓を撮った航空写真。不自然な中央部。

 

沼の写真を撮っていると私を観察しているような異様な視線を背後の新興住宅地から感じた。

 

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▲かつてここは忌み地であったのではなかろうか。そんな確信が強くなっていくに従ってあたりは黒くなっていた。フラッシュで撮影するとビニール袋の中身がはっきり見えて、女子生徒がバラバラに詰められているように見えた。

 

ふと、南アフリカの女性=Sonnet Ehlersさんがレイプ犯罪に対抗するための女性用コンドームを開発したというニュースを思い出した。

タンポンのように装着すると、内側には先がとがった歯のようなギザギザが並んでおり、挿入した男性の性器に食い込む仕掛けとなっている。外そうとするとさらに深く食い込むという。すると外れるまでずっと一緒にいることになる。

オサダの花が七まわり半咲いた、どのくらい前からいたのか分からない。

 

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愛おしい対象にほど私を突き刺して壊したくなるが、そんな時に壊れていくのは他ならない私なのかもしれない。

 

[参照サイト]

飯山満駅
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%AF%E5%B1%B1%E6%BA%80%E9%A7%85

船橋市ウェブサイト「飯山満ってどんなところ?」
http://www.city.funabashi.chiba.jp/shisetsu/toshokankominkan/0002/0007/0002/p011351.html

ミステリーゾーン飯山満駅
http://toshidensetsuch.com/?p=1174

レイプ犯のペニスに鋭いトゲが歯のように突き刺さるアンチレイプコンドーム「Rape-aXe」
http://gigazine.net/news/20100413_antirape/

飯山満さん42歳(千葉県船橋市)
http://urx.nu/9B9M

なんてったって芝山「ゆるぎ地蔵尊」
http://blog.livedoor.jp/nanshiba/archives/4446175.html

[参考文献]

「日本原住民と被差別部落」菊池 山哉

「飯山満東遺跡―下総台地における縄文前期を主とする集落址の調査」 千葉県都市公社、 日本住宅公団東京支社 (1975)

沼田小三
沼田小三(ぬまたしょうぞう)。古希に近づく昭和生まれ。日本各地の沼を巡る沼研究の第一人者。新宿区在住。

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