第七回 「乳を吸うのはかっこ悪い?」

 

 

 私は女の乳を吸うのが大好きだが、原因ははっきりしている。

 

 子供の頃に、土曜ワイド劇場で、江戸川乱歩シリーズ「エマニエルの美女」を見たからだ。

 

 

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 主演の夏樹陽子が風呂場で江木俊夫に乳を吸われる場面を見た当時10才の私は、いてもたってもいられなくなり、早く大人になって女の乳を吸いまくりたい、その為には一刻も早く独り立ちしなければならないと、大人びているのか子供じみているのかよく分からない心持ちで思春期を過ごしていた。

 

 美貌と色気を兼ね備えた夏樹陽子に頭を抱えられながら乳を吸わせてもらえた江木俊夫が死ぬほど羨ましく、後に彼がわいせつ目的で女性の飲み物に覚せい剤を入れて捕まった時は、あんな最高の思いをしておきながら、なんて奴だと、強い憤りを感じた。撮影から20年ほど経った頃にあのような事件を起こしたのは、夏樹陽子が魔性の乳の持ち主だったからではないか、というような事も考えたりしていた。

 
 あの作品を見て以来、女の乳を吸うのは、するのも見るのも好きだ。

 

 「サッカーはするのも見るのも好きです」

 

 これと同じような発言なのだが、人前で言うとなぜか苦笑されたり、軽蔑のまなざしを向けられる。

 

 思うように乳が吸えないからといって、苛立って発炎筒を投げ込んだりもしないのに、どうもフーリガンより低く見られているようで非常に心外なことだ。

 
 それはともかく、テレビドラマで女優が乳を吸われる場面は皆無になって久しい。かといって映画に期待できるかというと、それがさっぱりなのだ。

 

 せっかく女優が乳を出した濡れ場があるにもかかわらず、乳首に全然触れもしないで、首筋に顔をうずめてうごめいていたり、胸に顔はうずめるものの、乳首を吸っているかどうか、はっきりしなかったり、乳首に唇は触れるものの舌で転がしてなかったりで、全然駄目だ。

 

 濡れ場を経験した俳優が、「普段通りやってくださいって監督は言うけど、なかなかできるもんじゃないですよ~」などと後日談で語ることがあるが、女優の裸が話題になる作品は、たいがいクソ映画なので、クンニや挿入は無理でも、せめて乳くらいは普段以上にねちっこく徹底的にねぶりつくす場面を相米慎二ばりの長回しでお届けするくらいの配慮があるべきではないか。

 

 私には乳をほとんど責めないセックスなど考えられないが、映画界でこんな濡れ場が横行する理由は、芸能人は乳を吸うことに関心が無いなどでは決してなく、NG事項だのプライドだのが邪魔をしているだけだろう。

 

 乳をしつこくしゃぶられて、思わずアヘ顔になっているのを見られたくないとか、知人に「あの乳を吸う場面、おまえマジでがっついてたろ!」と冷やかされたくないとか、そんなちっぽけなプライドが、作品のスケールの小ささに直結しているように思えてならない。

 

 1987年の角川映画「恋人たちの時刻」では、河合美智子と野村宏伸の濡れ場が二回あるが、一回目はキスをしただけでいきなり挿入し、二回目は、河合美智子の上半身の至る所にキスをしながら、なぜか乳首は避けるという内容だった。

 

 よく女優が「必然性のあるシーンなので、裸になることは抵抗ありませんでした」とお決まりのように言うが、必然性のあるシーンで不自然極まりないカラミを披露していいのか。こんなセックスシーンを見せたら、別の意味で子供の教育上よくないのではないか。この映画を観た時はあきれ返ったが、案の定、その後の角川帝国と野村宏伸の俳優人生は凋落の一途を辿ってしまった。

 

 質の高さで観客を唸らせる作品は、なかなか出ない時代だからこそ、「あの乳を吸うシーンだけは良かった」とか、「日本映画は観ればとりあえず、いやらしく乳を吸っている」と海外で一定の評価を得るとか、そういう方向性を模索してもよいのではないか。

 

 そんなに乳を吸うシーンが見たければAVを見ればいいという意見もあるだろう。

 

 言われなくても見ているが、それも私にとって解決策にはなっていない。

 
 AVで乳を吸う場面が皆無ということは、さすがにあまり無いが、AV創世記から30年、同時代を生きた身としては、もはやAV女優が乳を吸われるのは当たり前という概念がよぎり、あまり興奮できなくなっている。一般映画ではなくAVとなると、乳を吸うシーンへ求めるレベルも高くなるのだ。

 
 AVにおける乳吸いは、未だ前戯のひとつの域を抜けていないことや、仕事で毎日のように吸っているせいか、乳吸いへの意気込みや執念に欠ける男優が大半であるのは残念だ。

 

 もはや片乳ずつ一応吸って終わりみたいな場面では満足できないので、男優二人で両乳を同時にねちっこく舐め回し、他の男優がクンニや挿入中もそのまま両乳を最後まで吸い続けるような、そんなガッツのある作品を求めているのだが、今のところ見たことはない。

 

 もしかしたらあるのかもしれないが、毎月リリースされる作品が多すぎてチェックしきれない。「両乳を吸われ」で検索してもそれらしき作品情報は無いし、2件目に子供に吸われて両乳首が痛いというヤフー知恵袋の記事が出てくるようでは、たぶん無いのだろう。

 

 せっかくの3Pや4Pでも、誰かが挿入中にやることはせいぜいフェラチオさせるくらいで、ひどい時には何もしていないことがある。

 

 もしかして、いい大人が女の乳を吸いたがることはかっこ悪いと思っているのだろうか?

 

 乳を吸いたがるのは、かっこよくはないかもしれないが、かっこ悪いと言われるのを恐れるあまり、乳にすら無関心を装っているうちに、いつのまにか覇気のない男になってしまうのではないか。

 

 AVではカメラワークがひどいことも多く、乳を吸う男の横顔をアップで延々と映していて萎えることがある。「仁義なき戦い」の菅原文太じゃあるまいし、こっちはシコっているのだから、乳を吸われている女の表情をフレームから外さないでもらいたい。

 

 もう一度、土曜ワイド劇場を見た時のような衝撃でギンギンになりたいものだ。そう思っていると、「エマニエルの美女」がCSで再放送された!大喜びで録画して見てみると・・・

 

 乳を吸うシーンは二回あったが、どちらも江木俊夫の横顔がアップだった。作品中、夏樹陽子が顔の見える状態で乳首を出している箇所は一度も無かったので、断じてこれはカメラワークが下手なのではない。江木俊夫の吸った乳は代役の乳だったのだ!

 

 

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 一気に興醒めするとともに、こんな下世話な話ですら思い出が美化されていたことにあきれる。何が魔性の乳だ。

 

 そして撮影当時の江木俊夫の心情を思うとやるせない。

 

 マグマ大使の子役の頃から美少年で、フォーリーブスの一員としてトップアイドルになった男が、

 

 「夏樹さんが江木さんに乳を吸われるのを拒否されましたので、代わりにこちらの女性の乳を吸っていただきます」

 

 事情を知っているスタッフやマネージャーの見守る中、よくわからない女の乳を吸う・・・この屈辱が彼のその後の人生に影を落としたのだろう。

 

 もし江木俊夫がまた同様の事件を起こした時は、情状酌量の為、証言台に立つ覚悟だ。

 

殿方充
芸人。「浅草お兄さん会」第6代チャンピオン。「下ー1グランプリ」第1回、第3回優勝。4才よりオナニーを継続中。

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